ご近所のリフォーム工事が終わり、次の現場が始まりました。 終わった現場は35年くらい前に岡田建設が施工した鉄骨造3階建ての物件のリフォームでした。今回は25年くらい前に建てられた、地下駐車場付きの木造2階建て建売住宅です。 お施主様(Kさん)は都内で介護の仕事をされていた方でした。 歳を重ねられてお仕事もやめ、姉妹お二人で話し合った結果、自然に囲まれた空気のキレイな、新鮮な食べ物を食べられる地方で一緒に暮らそうということになりまして、伊豆半島のI市のマンションに移住されたのでした。
そこは、朝日も入り、キラキラした海を見下ろせるロケーションで、鳥の声で目が覚め、新鮮な魚もすぐに手に入り、と申し分ないところだったようです。しかし、住んでみてから、いろいろと不自由が出てきてしまい、それに耐えられなくなってしまって、都内に戻ろうという事にしたとの事でした。 都内に戻るという決心をされてから、インターネットで物件を見つけて気にいり、その建物のリフォーム工事のご依頼をいただいたものです。
都内に戻ろうと思われた一番の理由は、電動自転車で買い物などに行って帰ってくるときにものすごく困ったからだったそうです。ちょっと重い荷物を買って戻ってくるときに、住んでいるマンションの直前の坂道が、「電動アシストなのに自転車に乗ったまま登れなくなるほどきつい、」というお話でした。 それから、医療関係については都内と比べることは出来ません。もっと歳をとった時どうなるのだろう?となったようです。
女房殿が富津に移住して感じていますが、やはり、一番大きな問題は病気やけがで治療をしてもらうときに、医療機関を選択することが難しいのです。 房総半島の北側部分、特に東京都と連なっていて千葉市くらいまでは人口も多く全く都会です。千葉大学附属病院はじめ医療施設、文化施設、交通施設は都内並みにそろっています。
しかし富津市のある房総半島の南側部分、上総、安房、九十九里と呼ばれている地方だと、大きく優秀な医療施設は鴨川の亀田病院とかくらいではなかろうかと思います。富津に近いところでは袖ケ浦さつき台病院、君津中央病院と大きな病院はあります。公共交通機関については、JRはほぼ一時間に1本ないし2本、バスはとても不便で高い。車を運転できなければとても不便です。 細かくなりますが、大事な服のクリーニングとか、切った髪が伸びてもそれなりに髪が整っている美容院はまだ探しきれていません。 しかし、そのほかにはあまり不満はなく気に入っているように思います。鳥の声で目が覚めて、海からの風も涼しく(台風の時は家が揺れますけど、)野菜も。魚も新鮮。人も優しい。
お施主様が都内で手に入れた住宅の話に戻します。ここを買われた時は大手業者が仲介しています。 お施主様が岡田建設の事務所にお見えになった時に、その物件パンフレットを持ってきました。 それには物件の情報が色々とジョウズに書いてありました。 お施主様は当然、現地にも行って、現認されたそうでした。 自分には1か所、気になった個所がありましたが、お越しいただいた時点で、ご購入を決めていたようでした。 その1点というのは、パンフレットの中に白アリ防除業者の添付された浴室部分の腐った土台や柱の写真と報告書があり、その内容についてちょっと疑念がありました。一言でいえば、「ホントかよ」と「しょうがないか」です。 写真を見て、「白蟻の食害ではないな。他もやられていつ可能性が高いな。それを書かないのだな」と感じました。「壊さないとわからないのだから、この写真部分のみの補強工事を見積もるしかないな」という事です。
ここで、自分の反省点があります。 それは、この物件を「買わない」という選択肢を持っているかどうかを、お施主様に聞かなかったことです。 手付を入れてしまっているみたいな話ぶりでしたし、売買の契約日も決めているとお話をされていました。 ここで、こちらから「ちょっと待って」と言えなかったのです。
建物の一部を壊させてもらって腐朽部分を確認させてもらえばよかった、という反省です。 しかし、壊して壁の内部などを見せてもらうのは難しいことです。 壊したところ、何でもないこともあるでしょうし、写真よりももっと広くひどい状態で壊した部分の復旧も出来なくなる可能性があるからです。 推測で話を進めませんから、やってからの話になってしまうのは「しょうがない」となってしまいます。
そもそも、自分は20年前以前の建売住宅に関して、仕事のレベルには全く期待していません。いつも、「このようなことまでして、安く上げようとするのか!」という事ばかりを見てきたからです。 「最近の物件は、そこそこ出来ているのかな?」と思うときもありますが、やはり、建売住宅は、建築基準法に則っています。この意味は、建築基準法が建築物に関する最低の基準だと謡った法律にのっとっているという逆説的な意味です。
現場に行き、内部を見させてもらい、不動産業者のパンフレットと照らし合わせて、次の打合せまでに概略の工事金額を自分なりに出しておくことにしました。
数日して、会社にお見えになり、契約が済んだ旨と工事の予定金額を話されて、この「金額でやって下さい」と言われま
して、先に考えていた概略の工事金額よりも工事の範囲を狭くしたり、機器のグレードを調整したりしてその金額に合わせ、提出しました。 その工事内容の主なものは、基本的に外部はいじらないで、
- 内部クロスは全部張替
- 浴室はユニットバスにする
- システムキッチンは取替える
- LDKの床は張り替える
- 2階の和室は畳を撤去しフローリングとする
- ロフトに上がる階段を作成する
というものです。建具などは現況通りです。
ご承諾を得て、岡田建設との工事請負契約を結んでいただき、 速やかに着工をするというお約束をしました。 工事予定表も出しました。近隣挨拶は、お施主様が東京まで出るのが大変だから、岡田建設だけでやってほしいという事で、こちらで済ませました。
工事着手です。最初は改修部分の撤去からです。 既存ビニールクロスのはがし、厨房セットなどの搬出、畳の搬出。 それから、浴室の内部撤去です。
ここで案の定、問題発生です。写真で見た腐朽範囲だけではなく広がっていて、壁の中の構造材はもう木材ではなく粉みたいになっていました。 土台として使っていた材木の材種も適切なものではなく、どちらかというと腐れやすい杉でした。 杉の名誉のためにいいますが、適切な場所に使用すれば杉はすごく耐久性、強度もあり良い材料です。 しかし風呂場回りはだめです。湿気が抜ける使い方をすればまだ良いのですがここのような場合はだめです。
在来のタイル張り仕上げの浴室にするのであれば、基礎を1mほど立ち上げるのが普通ですが、構造材を浴槽部分と床から離すような工法を取ります。 20数年前であればやっていたことです。 ここが建売住宅です。
ここでいったん工事を止め、写真を撮り、お施主様に状況報告しました。 不動産業者に「隠れていた瑕疵があった」として、補修の金額を請求する旨を伝えてもらいました。相手はいくら大手の名前であっても、悪い意味の不動産屋でした。 悪徳だろうということを言いました。財閥系の名前のついた不動産会社ですよ! 業界ではあそことは関係するなと有名な会社ですがね。
担当者は、「契約した後からわかってもこちらに責任は無いと、重要事項説明書に記載されている。重要事項の説明は一条ごとに読み上げて買主にお伝えしたうえで印鑑をもらっている。買い主はそれだから請求できない」というのです。 完全になめています。 そのようなことは書いてありません。そのように読めなくはない部分はあります。 写真の部分の補修不を請求はできませんが、隠れている部分に免責はありませんしあり得ません。
これが通るのであれば、全体的にやられているとわかっている時に、一部の見える部分だけ写真を撮り、「この部分はだめです。ここの補修金額を値引きます」と言い、契約書にその旨を記載し、他の個所を含めて損害賠償に応じなくてもよくすることが可能です。 これは詐欺です。
お施主様に、「このまま工事を止めておいて、売主にその場所、現状を見てもらい(法律上見せて確認させなければなりません)、補修金額を請求したらどうでしょうか? 弁護士を立ててそうしますか?」とお聞きしました。 そうしましたら、「そうはしたくないです。」とのお返事でした。 それで、こちらは補修工事のやり方を工夫し、最低限、これをしていけば何とか大丈夫という補修、補強を考えて、施工することになりました。 これは追加工事になります。 今はそこまでの工事をしています。 思う事は、買う前に建物を点検させてもらって、評価させてもらいたかったなということです。 壁の中の状態は壊さなければわかりませんが、ある程度の予想は出来ますし、心配な箇所を指摘して、実際に問題であった時の金銭的な解決方法を担保しておくことは可能と思います。 素人さんの目では、本当に表面的な見た目しかわからないと思います。これは岡田建設としてお手伝いできることだと思います。
次回に続く