涵養庵イメージ

今になって涵養庵の茶室開きを思い返したら

8月は暑いので、毎年、お茶のお稽古はお休みです。室内の掃除とお道具の整理を主にやるのが8月のお茶室の仕事でした。外仕事は、苔の維持を第一に、通常の水撒きのほかは、去年の夏に熱中症になったのでやりません。
そして何気なく、写真を整理していたら、涵養庵の茶室開きの写真が出てきました。茶室開きは平成29年4月の事でした。これは、自分にとっては黒歴史です。汗顔の極み、冷汗が出ます。 初心を忘れないためにもあの時のことを思い返してみることにしました。このことは過去に何回か書いていますが、もう一度。 

涵養庵イメージ


自宅の建物を建て替えた時に建物の一部を茶室にしました。これは、岡田建設の技術力を披露するという、ある意味ショールームという位置づけでした。四方がRCの間仕切り壁の建物内に本格的な茶室を造れます!というアピールです。
自分は、建物の一部の部屋を茶室にするというようなお仕事を何度かやらせてもらったことはありましたが、自分自身は茶道を習ったことはありません。そのような人間が茶室を設計したのです。 茶室に構成に関する言葉は当然知っていました。 床の間、炉、水屋などはもちろんですが、中柱とか太鼓襖、台目畳、茶道口、給仕口、躙口そのほか、教科書に書いてあるものは勉強していたつもりでした。しかし、その細かい意味は分かりません。それらを盛り込みながら、適当に平面図を書きました。
そんな状態で図面を書き上げました。しかし、一応茶道を習ってきた娘から、「こんなんじゃお点前はできません!」と言われたのですが、その意味さえ分かりませんでした。
娘の意見を聞いて、設計をやり直しました。初期設計で、設計担当の無知から、躯体段階で致命的な問題で、躙り口が取れないというものもありましたが、とりあえず無難にプランが出来、工事が始まり、竣工しました。それが平成28年10月の事でした。

涵養庵 イメージ


ここからが無茶と無謀の始まりです。
まず最初、茶室のお披露目をすることを考えました。しかし、今思えば、この段階でひとをお呼びしようなどとは考えてもいけないことだったと思います。茶室そのものは出来上がってはいました。庭はまだ完成してはいない状態です。そしてこの時点ではまだ全然と言っていいほどお道具はそろっておりません。最小限のお道具はありました。

涵養庵 2018年茶庭イメージ


岡田が茶室を造りますという事を知った、お施主様、知人、叔母から最低限のお道具を頂戴していた程度でした。特に盛岡の叔母は年齢からちょうど自身のお教室を閉じた時でした。非常に不謹慎な物言いになりますが、自分にとっては素晴らしいタイミングでした。そして、茶室のある住宅を建て替えることになった友人が、あまりに無謀でなおかつ悲惨な状態を見かねて、いろいろなお道具、茶碗などはもちろん、灰や炭なども頂戴出来ました。その上、笠に苔の生えている灯篭、蹲一式、踏み石類なども手に入ってしまいました。
その頃、娘は茶道教室を開くことは年齢その他の問題でまだ出来ませんでした。どうすれば良いのか悩んでいた時に会社関係でお付き合いのある方からのご紹介で、素晴らしい福井珠乃先生と巡り合う事が出来ました。

2018年 珠乃先生とお稽古イメージ


珠乃先生がいらっしゃらなかったら、茶室開きは間違いなくとんでもないことになっていました。茶室開きの準備、お呼びする方への案内、当日の式次第などは教科書、インタ^-ネットを見ながら進めました。主旨はお世話になった方々に対する感謝です。いただいたお道具に一貫性はありません。ただ出しました。 茶道を嗜んだ事が無かった人間が設えをするのです。 まあでたらめでした。 
平成29年4月の吉日。当日、「お手伝いは出来ません」と話しておられた珠乃先生が来てくださいました。今でも茶室開きの話が出るたびに、“見ていられなかった”と言われてしまいます。 来てくださって、いろいろと出来る範囲でお手伝いしてくださって、無事に終えることができたのです。
その時の写真を盛岡の叔母に送ったところ、「お弟子さんに見せられる写真ではないです。私が恥をかいてしまいます」と言われてしましました。その時、なぜかの意味は分かりませんでした。
琵琶床に、お施主様から頂いた有田焼細口の大きな花瓶を置きました。
花入れの敷板は漆塗りの丸い板。
その横に知人からの頂き物の香炉。
友人から頂いた萩焼のお茶碗を揃えました。
知人から頂いた、黒漆塗りの炉縁を使いました。
 そのほかいろいろとやらかしました。 何も知らないというのは無敵です。
これらはすべて、頂いた方々への感謝の気持ちから茶室開きの時に使わなければならないという思いで使ったものです。 娘、息子からはかなりな言われようでした。女房殿からも。 先生、お客様は何も言いませんでした。 さすがお茶を嗜んでいらっしゃる方々です。 自分は「やったぞ!」「無事に終わったぞ!」でした。 みんながやってくれたからできたのに、勘違い男、ここに極まれり!!!です。

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