富津荘 大谷石

富津荘ピザ釜作成の事

いよいよ、富津荘で、2年前に手がけた板橋の現場で出た大谷石を使ったピザ釜作りに挑戦することになりました。現場の大谷石積みの塀の石を再利用しようと、目論んでいたものです。
自分の設計施工の現場であれば、そこの場所での再利用を考えます。作った方の気持ちが込められていると考えるからです。例えば、大谷石を敷き詰めた床は、趣がありきれいです。設計者は、大谷石が柔らかいから床には向かない、という思い込みが強く、その提案は却下されました。かろうじて、通用口から3m足らずのところに数個使ったのみでした。できあがってから、施主様から、「きれいなものですね。」と好評価されました。そして、前にあったものを使ってくれたことに感謝して、喜んでいただきました。百枚以上あった大谷石のほんの数枚にもかかわらずです。
確かに大谷石は柔らかい石です。公共建築物の通路などで、一日に数百人、数千人が通るところでは、10~20年もすれば見てわかるくらいすり減りますが、個人の家の出入り口に敷きこんでも、床がすり減るには数十年あるいは100年はかかるのではないかと思います。あの固いと言われている御影石でさえも、一日数百人、数千人の人数が通るところでは、磨り減ります。銀座の数寄屋橋付近の歩道は御影石を張り詰めていますが、磨り減っていました。設置からどのくらいの年月と人が通ったのでしょう。

上野駅の、一般道から駅の2階口に上がっていく車路の歩道、欄干手摺などが大谷石になっています。ここは、昔、鹿島建設が施工したという事ですが、この石工事で毎日百人を超える石職人を差配した石工の棟梁は、岡田建設が上板橋で創業した昭和26年当時、もう70年近く前になりますが、大変にお世話になった方で、自分が少し大きくなってからの事ですが、その当時の写真を見せていただきました。その親方さんが、すごく迫力のある人だ、と子供心に思ったものでした。そこは、後継者がなく、10年位前にその石材店さんとのご縁は、廃業という事で無くなってしまいましたが、そのお弟子さん筋の石材屋さんとのお付き合いを、継続していただいています。

現場で使わない大谷石を、再利用してピザ釜をつくる、という気は満々だったのですが、なかなか機会に恵まれずに2年経ってしまいました。 一番大きな理由は、自分自身の体調でした。狭心症になったり、脊椎管狭窄症という事で、左足付け根の激痛・疼痛が続いていて、床のものを拾うにも不自由していた身体が、徐々に痛みが和らいできたので、また、その気が沸いてきました。 まだ、重いものを扱えるほど直ってはいませんし、あの激痛が再発することは非常に怖いですから、今回はうちの職人に手伝ってもらいます。図面は別紙の通りです。

ここで間違いが出ました。大谷石の厚みを180㎜としていたのですが、実際は150㎜でした。 少し小ぶりなピザ釜になりそうです。

ピザ窯を作ろうと思った初期図面

ピザ窯を作ろうと思った初期図面

 

大谷石の様子

板橋から運んできた大谷石をこのように積んであります。シートをかけておいた方がよいのですが、昨年台風の風で飛ばされてしまい、そのままにしました。ピザ釜を建てる場所にかからないように積んであります。そうしないと、積んである石をどかしてから仕事を始めるという、2重手間になってしまいます。

大谷石の様子

これは、すごいアイディアだと思いました。 マンションのリフォーム工事の際に、荷揚を階段でしなければならなくなりそうな時、ベランダや廊下にウィンチを設置しなければならなくなります。その時のために用意している100kg楊重可能なウィンチを、トラックに取付け、ユニック車みたいにして大谷石を積み上げました。チェーンブロックを使う手作業では、日数が倍になってしまいます。

遣り方(位置決め)

位置と地面を掘る深さを決めるために杭を打ってあります。建物を建てるときにも「水盛・遣方」という呼び方でこの作業があります。このように、ピザ釜の設置位置は、大谷石を積んであるところから外れていて、なおかつできるだけ近いところです。

根切

土を設定の深さまで掘りました。掘った底の部分を平らにして、底板の石が水平に敷きこめるようにしています。ここは、50数年前に、この土地を買ったときに、敷地全体を山砂で土盛りをしてあったので、特別に地業(割栗石などを敷き詰め、突く作業)をする必要はありません。

底板の敷き込み

底板を敷きこんでいます。立上り壁部分を支えるためです。但し、この作業で石を水平に敷かないと、これから立上り壁の石を積み上げていった時に、傾いてしまって、やり直しになります。 ここは重要な押さえところです。

石積み開始

図面に合わせて、立上り壁部分の大谷石を積んでいきます。

石積み

水準器で水平を見ながら作業しています。一段一段水平を見ながらです。

形になってきました

釜の横の部分

釜の横の部分は、バーベキューの時に台です。 それだけではなく、釜が倒れないように補強の意味を持たせました。

釜の横の部分バーベキュー台

大谷石積み作業は完了です。 この後は次の機会になりますが、これからやるべき作業としては、

  1. 壁にモルタルを塗る。  (これは大谷石に雨水がしみこまないようにするため)
  2. 前面の開口部に扉をつける。
  3. 煙突をつける。

これらが終わって完成になります。 工期を責められることはないので、いつになるかは、体調と気分次第です。 完成したらば、またお知らせします。

今のままでとりあえず火入れをして、魚でも、肉でも焼いてみようと思っています。

使用した大谷石は、1個が900*300*150の大きさで、ここには約50個使用しました。5段程度の大谷石塀ですと、約9mの長さの塀です。石はまだ残っていますが、これらは地面に敷き並べて、その上にテーブルと腰かけを置き、バーベキューの時の食事場所にするつもりです。それで、全部使い切ります。 大谷石の厚みが薄かったので、地面に埋める深さを深くしたため。図面よりも数量を多く使いました。

かかった費用は、

1. 塀の大谷石を外す作業 ¥100000-(機械でやると壊してしまうので手作業です。)
2. 大谷石の運搬費 ¥100000 (板橋から富津まで)
⇒既存塀と同じならば不用
3. 組み立ての手間 ¥300000 雑材費含む、富津までの職人出張費を含む
4. 釜外壁のモルタル塗りなど ¥250000
⇒概算
5. 煙突、扉など雑費他 ¥150000
⇒概算
合計 約90万円

工事を依頼された場合は、これに会社経費をいただきます。総額100万円という所
でしょうか。 慣れ親しんだものを新しいところに使いたい、という気持ちをお金に
換算はできませんが・・・。

ここに屋根をかけて、ちょっとくらいの雨でも楽しめるようにすることも考えられます。

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