建築現場での面白話_1

建築現場での面白話_vol1

今まで、数多くの現場をこなしてきました。自分が23歳の春以来、66年が経ちました。
「他人の飯を食って来い」ということで、大学を卒業し、RC造建築専門の建築会社に就職しました。いわゆる野丁場(ノチチョウバ)仕事をする会社でした。(反対語は町場あるいは旦那場仕事といいます。)まず、現場では大学の授業は何の役には立たないことを身にしみて感じたものでした。自分自身、教科書をよく見ていなかったのかもしれませんが、建築現場の用語がわかりません。わからない故の面白話です。

入社して最初に自分自身が派遣されたのは、東京下町でした。その当時の下町はまだ、○○組とかが幅を利かせていた時代です。今はわかりますが、その当時そのような事を全く知りませんでした。計画建物は7階建ての自家用のある共同住宅でした。
解体工事から現場に入りました。木造の既存住宅があり、それは普通の解体でした。RC造の蔵があり、それは鉄球で解体するのです。クローラクレーン(キャタピラ走行のクレーン)のワイヤーに約3tの鉄の塊を下げて、壁は鉄球を振り回して壁にあててこわします。屋根と床スラブは高いところから鉄球を落下させて壊します。タイミングが外れて隣のビルに当たりそうになるのを見る度に、股間がむずむずして胃も縮みました。
このように鉄球を使って解体する作業は、現在あまり採用していないと思います。 あの[あさま山荘事件]で、過激派が立てこもった建物を壊すときに久しぶりに見たものでした。
現場での面白い話を思い出しながら書き出します。
現場言葉が分からない自分自身の面白話のいくつか。その最初の現場での出来事です。

  1. 根切(建物の基礎を構築するために地面を掘る作業)の前に、根切工事の会社の担当者が現場の現状確認に来ました。主任は留守でした。当たり前ですが自分にいろいろと聞いてきます。 そこでの言葉でびっくりしたのが、「レールを打たないのか?」というものでした。自分にとって、レールは線路に敷くものです。 {??}頭の中が混乱しました。 {レールを敷いてトロッコで土を搬出するのかな?}というのを考えました。その担当者は、自分が話をわかっていないということに気付いて、「また、主任のいる時に来ます。」と言って帰っていきました。まだ現場事務所に電話がない時で、アポを取りにくかったようでした。
    あの時分は、山留の支柱はレールが多かったようです。 というより、会社が山留用資材として保有していたのです。そして、抜くことが多かったです。 現在、山留の支柱はH鋼や山形鋼が主流で、埋め殺してしまいます。
    H鋼
  2. 掘削土の搬出がおわり、数人の土工に根切底の均し作業をさせていました。その中の一人の土工に「ここのところはコマワリにしてくれないか?」と言われました。コマワリという言葉の意味が分かりませんでした。その土工たちが作業していたのはエレベーターピットとなるあたりで、一般の根切底と高さが違います。一所懸命、根切底の高さを説明しました。 土工たちは{こいつ何???}でした。
    コマワリというのは、その仕事を終わらせれば、早く帰っても良い、ということです。 1時ないし2時前に終われば職方の勝ち、3時過ぎまでかかれば監督の勝ちです。 職人たちは経験がありますから、その仕事がどのくらいの時間がかかるか読めます。自分にはわかりません。今日はこれを終わらせればよいのだからと「OK」しましたところ、1時前に終わって帰ってしまいました。
    主任が現場に戻ってきて、「土工たちはどうした?」と聞かれました。「コマワリにしました」と言いましたらば、「馬鹿野郎!10年早い!!」と怒鳴られてしまいました。
  3. 捨コンを打設し、墨出しです。自分は、墨出しという言葉を聞いたときに、墨汁の容器から墨を絞り出すことを連想しました。なんでこれが一日の仕事なの? でした。ちなみにこの時の墨出し作業というのは、地中梁の位置、大きさをコンクリート面に墨で示す作業です。 道具は墨ツボと墨差し、メジャー、水糸、コンクリ釘、玄能です。機械は直角を出すためのトランシットと水平を出すレベルです。 主任からこのトランシットを据える作業を任されました。 15分かからないで据え付けを終えたところ、墨出し職人が、「ほ~」ってな顔をしていました。
    このトランシット据え付けは、要領が悪いと一時間以上かけてもできない人がいます。 大学での測量実習の授業(午後の2単限)を、居残りを含めて3回やった成果でした。(1回、途中で早めに一服に抜け出したのがばれてペナルティあり)
  4. 基礎工事は、鳶工の鉄筋足場組み、基礎躯体の配筋作業、型枠作業と進みます。鉄筋屋の職人から、「ドーナッツとキャラメルを持ってきてくれ」と言われました。普通は、3時の一服で食べたいのかな? ですよね。
    この言葉は、以前に、聞いていました。現場主任がその資材を注文するときに自分がいたのです。話は、入社したばかりの現場監督が職人からそれを言われてお菓子屋に行き、それらを買ってきて職人に渡しました。そして、そこの現場主任からぶち怒られたという話です。自分はちゃんと鉄筋のスペーサーを持ってきて渡しました。 職人たちは、初心者監督の自分を試したのです。肩透かしで自分の勝ち! ドーナッツ、キャラメルのほかにコシカケと呼ぶスペーサーもあります。なぜそう呼ぶか?あの当時のスペーサーはモルタルで出来ていて、形が似ていたのです。

自分は、この現場で本当にものすごく勉強をさせてもらいました。いろいろな経験をさせてもらいました。主任という人がずぼらな人で、あまり現場にいません。いないというのは、自分にとってはものすごく勉強になるということです。初めての現場にもかかわらず、皆が自分に聞いてくるのです。工事予定、納まりなどは自分の方がよく知っていましたから、すぐに返事ができました。困ったのはどの程度の下地で仕上がり具合がどうなるかがわかりませんでした。経験がないからです。
ただ、職人とのお付き合いは面白かったです。全身本当にきれいな彫り物をしていて、作業をしているときに、ダボシャツの袖、胸からちらちらと見えるのは、ちょっと苦手でした。しかし人間的にはすごく良い人たちでした。

その後、現場を仕上げたときには、感慨深いものがありました。そのときのものすごい言葉遣いが身についてしまって抜けきらないで、今でも、時々それが出て、他の人を怖がらせているのではないかと思ったりもしています。
自分自身が経験した自分の面白話、もう少しあるのですけど、また次の機会にさせていただきます。

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