図面を観ながら相談

「概算見積もりをお願いします」と言われても・・

先日、CADで書かれた計画平面図1枚と既存平面図1枚を渡されて、「これはいくらでできますか?概算でもよいのでお知らせください」という依頼がありました。 

平面図はマンションの1室をフルリフォームする平面計画図でした。 それには、個々の壁は一部残すだのこの天井も一部残す、などという書き込みが入っていました。

  1. マンション管理組合の許可申請はどのようになっているのか。
  2. このマンションの築年数はどのくらいか
  3. この部屋がマンションの何階にあるのか、 
  4. 3階以上の時に、荷揚げに際してエレベーターは使えるのか
  5. エレベーターを使える時間制限はあるのか
  6. 作業時間の制約はあるのか
  7. 壊し作業の時の騒音について許容してもらえるのか

上記のことを知りたいと思いましたが、答えをもらえませんでした。「他の会社にも同じ図面でお願いしている。 概算で良いので、早く提出してください。」という事でした。
なぜ、1から7までのことを知りたいか?という疑問があるでしょうからお答えします。まず

  1. ①について 管理組合の役員に説明できる工事資料を全て出せ、とか何人の職人でやるのか、とかその他資料作成に時間と労力を必要とするときがあります。
  2. ②設備配管材の耐久性がどのようなものかを推定し、危なそうであれば、その分を見積りに反映させます。
  3. ③④⑤荷揚げに要する手間をいくら盛り込むかを見るのに必要です。
  4. ⑥職人一日の作業量を見るのに必要です。 一日の作業時間が短ければ当然全体の作業日数が増え、比例して金額も大きくなります。
  5. ⑦壊すときには通常、必ず、騒音は発生します。いつでもどこでも、極力騒音が発しないように注意して施工します。しかし、工事をするときの騒音の発生は避けられないことです。造作作業に入っても、職人の電動工具の音は発生します。

ここの見積りというのはこれらが分からない場合不可能です。 百歩譲って、この部屋をスケルトンにして躯体(RC造かSS造蚊も分かりません)を出して、そこで新規に平面計画図のように施工するというのならば、概算見積りが出来ないことはありません。しかし、ここでは残す部分が半分くらいありました。既存と直す部分の取り合いがどうなるかもわかりません。新しい間取りの設備配管がどのように既存と接続できるのかなども分かりません。エアコン配管の経路が取れるかもわかりません
わからないものをいくらで出来るかを言えるはずがないのです。


質問事項の答えを待っている間に、とりあえず、数量だけでも出しておこうと、図面を詳しく見はじめました。 間取りの芯々寸法が分かりません。ですから、今までの知識を駆使して部屋の大きさを推測し、その概略寸法を図面に書き込んでいきました。 そこまでやって、やっと床、壁、天井の仕上げの面積を出すことができます。それに材工単価を入れます。 そこまでで、出来る見積もり作業は終わりです。

建築図面イメージ


設備関係は各専門業者に出してもらう事にしています。 特に昨今は設備品の金額の上げ幅がすごくて、前回の金額では提出できないという事情もあります。 
施工が何坪だから、坪当たりの金額をかけて、工事費の概算は出せるでしょう!みたいに思っている方が大半で、また、概算見積りを出す業者さんもいるので、こちらとしても、どうすれば数字の違わない金額を出せるか研究中です。

延べ〇坪の木造2階建ての一戸建て専用住宅がいくらでできますか?というお問い合わせが来ます。 ウチはそれにお答えできません。 道路付け、仕上げの程度、地盤の状況、など状況によって金額は大きく変わります。 
よく、金額を出せない理由で、自分は例え話をします。 トヨタの販売店に行って、「クラウンはいくらですか?」と聞いた時にすぐに答えられる職員はいないと思います。 どのクラスなのか?オプションなどはあるのか?いろいろと聞かれて、その答えによってはじめて「それならいくらくらいです。」と答えられると思います。販売店の人で、クラウンと指定しても、グレードとかが分からなければ答えません。

パターンメイドの洋服でもすぐには答えられないと思います。生地とか特別なデザインだとかで違ってきます。オーダーメイドの洋服ではなおさら違ってきます。 職人の腕によっても違うはずです。 吊るしの既製品だと金額ははっきりしています。 それでもブランドによっての違いは出ますけど。ましてや、住宅にについて、何もわからないでこたえられるわけない、と思っています。 
住宅の場合、すぐに答えられるのは建売住宅と、数種類のプランで販売している業者だと思います。やみくもに平面図でいくらで出来ると答えられる業者さんはどうしてこたえられるのだろうと、心底不思議に思います。考えなければならないことだとは思っています。

建築地の地盤が悪ければ基礎工事金額に大きな違いが出ます。 道路が狭いと運搬費に違いが出ます。 外部仕上げ、内部仕上げ、使用する設備品、それらによって全く違ってきます。 敷地が5m道路に面して、基礎は耐圧基礎、構造材は集成材、仕上げは基本的にビニールクロス、フローリング、中程度のユニットバス,システムキッチン、外部の壁はサイディング、屋根はコロニアル。このような仕上げで、延べ坪が25~30坪程度で、1階と2階の面積比が1:07程度までならば大体の金額は出せます。 
延べ床面積が15坪以下ではすごく割高になります。手間が多くかかります。また設備にかかる金額に、延べ坪25坪程度と差が無いので、とても割高になるのです。


出来ない理由を書き連ねました。 実際、ちょっと高級な部類に入る仕事をやらせてもらっているので、仕上げの程度は同じというのはありませんでした。自分もこんなにしたい、あんなにしたい、と考えてしまいますので、ただ聞かれても困ってしまうのです。

言い訳の羅列ですかね~?

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