令和1年8月3日(土曜日)に、目黒雅叙園に行ってきました。 目的は、うちの涵養庵でお茶を教えてくださっている福井珠乃先生のプロデュースによる和菓子作り体験のお相伴でした。福井先生は、雅叙園で宿泊者の方たちにだけ提供している、お抹茶のお点前を披露し、喫っしていただくというお仕事もやっていらっしゃいます。
最初、女房殿が知り合いの方と一緒に行くことにして申し込んだのですが、その方の都合が悪くなりました。 キャンセルするのも先生に申し訳ないし、自分はまだ雅叙園に行ったことがないものですから、有名な螺鈿のトイレや螺鈿のエレベーター、百段階段などを見てみたいという好奇心から、行くことになった次第です。
まだ、まともに歩く自信がないものですから、電車で行くという選択肢はありませんでした。自分で車を運転して目黒まで行きました。
駐車場に車を留めて、エレベーターで1階ロビーフロアーに上がります。ここは新館というのでしょうか、4~5階分の吹き抜けになっていて、太陽光が透明なガラス屋根を通して庭にはサンサンと降り注ぐようになっています。見事だなと思ったのは、がけをうまく使って、そこを見せることで、ビルなどの外界の景色を見えなくしていることです。 庭の部分には、屋根がかかっていません。
当日は、浴衣を着た男女が行きかっていました。何か浴衣を着る催しがあるのかな?と思っていたのですが、浴衣を着ると、レストランでの食事などの料金が割引になるそうです。
まず、日本料理「渡風亭」というところで、昼食です。 ここには、それぞれ特徴のある何室かの個室があり、お食事をいただいたのは、桂月という名前の数寄屋普請的な作りになっている個室です。案内をされたときに、すでに2名の和服を着た女性が来ていらっしゃいまして、福井先生の社中の方たちでした。私たちの後に来たのは、1週間後に、アメリカの錦織選手がいたところにテニスの修行に行くという娘さんとそのお母様のお二人です。その娘さんは、日に焼けて背も高く、最初見たときは、かわいい男の子と思いました。この子は、現在高校2年生で、大阪なおみさんを尊敬していて、追いつこうと努力していて、かなり今後を期待されているということでして、自分達としてもご縁をいただき活躍を楽しみにしています。 順次お料理が運ばれてきました。それぞれが手の込んだ、美しい、おいしいお料理でした。
和菓子作り体験の参加者が、それぞれ、ここで小一時間の懐石料理昼食の後、少し時間があったので、館内の散歩をしてみました。螺鈿のトイレにはこの時に入りましたが、公共的な使い方をする、ここのトイレにこのような細工を施す、という気持ちを持ったところにすごく感心しました。確かに一見の価値はあります。 入ってきた人たちは、それぞれスマホで写真を撮っていました。こんなふうに、トイレの中で写真を撮るなどと言うのは極めて珍しいですよね。
集合時間になったので、その集合場所に行きました。案内をされて、エレベーターで8階に上がります。宿泊者専用ですが、そのエレベーターの扉と箱の中の壁・天井が螺鈿で仕上げてありました。
会場となるお部屋は、ホテル雅叙園東京のスイートのダイニング・リビングルームです。広さは30畳くらい、もっとあるでしょうか。 人数は20名ほどの方々がダイニングテーブルの周りに腰かけました。
講師の先生は、和菓子職人島田省吾という方です。(プロフィールは※を参照)
餡や皮は出来ているものを使います。最初に、餡を丸めて、白い皮で包んで形を整え、ヘラを押して模様をつけて・・・・。
次に、思い思いの和菓子を作ってくださいという、参加者のデザイン力が試される課題です。あらかじめ色の付いた皮を組み合わせてつくるものです。小さな、高さ30㎜・径15㎜ほどの瓶に入った金箔を散らしたりもできます。先生のご注意で、「金箔をあるだけ全部使わなくとも、効果を上げられますよ。」という言葉が発せられました。多分、過去に、全部使ってしまった方がいたのでしょうね。
出来上がってから、作者の意図などを発表しました。皆さん、上手に作れていて感心しました。最後に、作ったものを食べて、福井先生が点てた抹茶を飲みます。しかし、もったいなくて食べない人が多かったように思いました。自分は、先生が作ったものを食べることが出来ました。おいしかったです。
(自分は、{牛にひかれて善光寺参り}の口なので、実際に和菓子つくりをしませんでした。)
男性は、講師の先生と自分だけでした。懐石料理を楽しむだけでも価値はあったと思いますが、男性諸氏も、もっとこのような行事に参加されてもよろしいかと思いました。
和菓子作りが終わってから、百段階段に行きました。この時は、「和のあかり×百段階段2019」 という催しをしていました。 階段途中にある各部屋に照明器具が展示されています。照明の組子細工は非常に見事でした。組子といえば、建具や欄間の組子が素晴らしかったです。なかなかに見ごたえがありました。各室の造作も素晴らしかったです。写真が下手で見せ場をお見せできないのは非常に申し訳ありません。
それよりも、ダメかなと思いながら、百段階段(実際は99段だそうです)を、杖を使いながら、昇って降りることが出来たのがとてもうれしかったです。(今年の初めから足の付け根が痛み出して、痛くて寝返りを打つたびに目を覚まし、また腹筋に力を入れると痛くて、トイレもままならなくなり、整形外科医の診断は、3か所の脊椎管狭窄症という事で、一時は手術を覚悟しました。痛いと言われている尿管結石、ぎっくり腰、交通事故で車にぶつけられた痛み、狭心症などは大したことないと思うほどの激痛、疼痛。それが、この時分からだんだん痛みが薄らいできていました。)
ところどころにいる説明の女性に、昇り降りしやすくて助かりましたと、少し褒めましたらば、「ここの階段は、実際に宴会場として使っていたころに、女中さんがお膳を運ぶのに、昇り降りしやすい蹴上と踏み面の寸法になっています」という説明を嬉しそうにしてくれました。 ちなみに雅叙園のエントランスホール階から、百段階段の登り口の階まで行くエレベーターも螺鈿で飾られています。
このような具合で、雅叙園の見学は無事終わりました。
※和菓子職人
島田省吾
埼玉県深谷市出身
和菓子製造技能士一級・製菓衛生師
東京と広島の老舗和菓子店にて、13年間修行
和菓子職人独立起業プロジェクトとしてwagashi asobiに在籍中
過去の受賞歴等 | |
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2009年 | 日本菓子協会 東和会 優秀技術賞受賞 |
2010年 | 日本菓子協会 東和会 優秀技術賞受賞 |
2012年 | 全国和菓子協会「選・和菓子職」にて優秀和菓子職人に認定 日本菓子協会 東和会 優秀技術賞受賞 |
2013年 | 国際交流基金 和菓子体験イベント 講師としてインドへ 全国菓子研究団体連合会 上生・引菓子部門銅賞受賞 広島菓子博にて農林水産大臣賞受賞 |
2014年 | フランス和菓子協会「青遊会」設立 メンバーとしてフランスへ |
2016年 | 全国菓子研究団体連合会 上生・引菓子部門 グランプリ受賞 |
2018年 | 日本菓子協会 東和会 優秀技術賞受賞 |