断熱と遮熱についてコラムイメージ

断熱と遮熱について

昨今は、高気密、高断熱住宅というのが、行政の方針となっている。
ここで一言、言いたいのは、在来工法の場合、壁の中に、壁厚いっぱいの断熱材を入れる事の弊害について、なんらの検証もされていないのではないかということです。

在来工法による木造軸組み構造は、日本の風土である高温多湿による悪影響を防ぎ、木材の耐久性を高めるために通気に主眼を置いている。特に、湿気を室内に入れないという視点から、外壁下地に防水シート(透湿タイプが主流)を張ることがほとんどである状況にあるから、壁内の空気の流れは確保しておかなければならない事だと考えている。
そのような時に、壁の中いっぱいに断熱材を充填した場合、空気の流れは阻害されてしまうことは自明である。それは、壁内の湿気がかなり長時間、抜けないという事であるから、取りも直さず、住宅の耐用年数を短くしてしまう。そのように考えている。

日々の生活費を考えたとき、省エネということ、高気密であることは必要であるということに対しては、全くその通りで、そのことに異を唱えることはない。ただ、ただ、建物の耐久性、要するに、建物を長持ちさせるためには、断熱材を壁厚さいっぱいに充填してしまうことが、総合的に見て省エネになるのか、と思っているだけ。

総合的というのは、壁内の空気の流れが確保されて、シロアリなどの食害がなければ、30年、40年あるいは50年間、十分に構造的安全性が保たれるのは、経験上感じています。(富津の家は建築後54年ほどになりますが、構造的な問題は発生していません。ただし、今年の台風24号による強風で、南側の下がり棟が損傷しました。)
建物が物理的に存続できれば、当然建て替えの必要は発生しないわけで、その分のエネルギー消費は無いということです。 この事はかなりの省エネです。

今の「省エネ」のために断熱材をたくさん入れる、サッシのガラスを2重にする、そのほかいろいろとやっていなければ高気密高断熱の仕様を満たすことは出来ず、また、税法上、融資を受ける上などで不利益になるのでやらざるを得ないのです。 ただ、そのことをするためのエネルギー消費は、とてつもないものだと思います。 まあ、総合的な省エネという事よりも、経済活動及び政治活動の上からはそのことが必要なのでしょうけど。

屋根工事イメージ

そのような中で、総合的な省エネを考えたときに、遮熱という考え方に行きついたわけです。遮熱シートというものがあります。それを屋根下地、壁下地、床下地に張りこみます。今、アイスクリームを買うと、銀色の袋に入れてくれます。遮熱シートです。昔は発泡スチロールの箱でした。
遮熱シートによって、熱を遮るというか、熱を反射させるということです。 簡単に言えば、夏、暑い日差しからの熱を反射させることで室内環境を良くする。冬は、逆に室内の温かい熱を、部屋側に反射して、室内環境を良くする、と、そんなことです。 室温的な住環境を良好にするためには、サッシはペアガラスでやるしかないですが、そのほかは遮熱シートと50mmの断熱材で、十分に快適性は確保されます。

長野県小諸市で、それを実践した住宅があります。 冬は零下15度以下になる地方で、屋根・壁・床下に遮熱シート(断熱材としては75mm相当)と50mmの断熱材を施工しました。 薪ストーブがありますが、冬の夜、太めの薪を1~2本入れて置けば、朝まで快適に過ごせると言ってもらえました。
今後、何年も存在し続けてくれることと思います。

-岡田の仕事