絽炉回り

倉庫の一部を茶室にする工事-Vol.8

2021/11/20

いよいよ工事も最終段階に入りました。 施主様との打ち合わせも頻繁になりました。ここまでくると建物は出来上がっていますから、いろいろと微妙なものを実際に見て決めることができます。 特に色については、25角とか50角程度のサンプルから選んでいただきますが、それを壁に張った時の雰囲気を想像してもらうのは、小さなサンプルでは難しいと思います。

まず、外壁の色について、室内で「この色!」と決めましたが、実際に外壁に塗ったところ、その印象が施主様のお考えと違っていました。 これは室内の色は「外部で見ると薄く見える」というのが経験上わかっていたので、ご指定の色よりも濃くしましたが、まだちょっと違和感があったようです。 4色ほど段階的に塗装工が調色し、それらを実際に壁に塗って、その中から決めて頂きました。

外装塗装試験塗り

内壁のビニールクロスを貼り終えてから、茶室壁の腰張りの紙の色を決めました。これもカタログで決めたビニクロの見本が、実際に茶室で貼りあがった時にどう見えるか想像できないという事で、壁を貼り終えてから決めるという事にしていました。 最近の建物には和室がないことが多くなり、襖も無く、紙自体が売れないからか、メーカーで新しく見本も作らないようになってしまいました。ですから、紙の色を決めるときも、決めた色がない時を考えて、第二・第三候補を事前に決めておかなければならないのです。やはり、そのメーカーでは第一は廃版になっていましたが、ほかのメーカーに同じ色の紙があり、事なきを得ました。

収納の棚板の間隔も決めてもらいました。まだ、どのお道具をどこの棚に入れるかを考えている最中という事で、とりあえず100mm間隔で棚受けと作るという事にしました。水屋流しの棚はまだ決められませんでした。規定外の流しですから、なかなか決められません。しょうがないところではあります。また、本棚に折り畳みのカウンターを付けてほしいというご希望が出ました。

釘類の位置も決めてもらいました。蛭釘の向きを決めて頂き、花釘や中釘の高さなどを実際に畳の上に座って決めて頂くことができます。 ごく普通の茶室の場合、釘とかは、ある程度決まりみたいなものがあるようですが、ここの場合は、やはり、座ってみての感覚に寄らなければならないと思いました。この感覚というのがお施主様の感性の発露です。悩んで当たり前、みたいに思います。 決まるまで待ちたいと思います。しかし、時間に制限を設けないと決まらないのも確かなので、そこのところは催促をさせていただきました。

施主様に、完成後の点検をして頂きました。 概ね喜んで頂きました。腰貼りの紙の色は大満足の様子でした。やはり、壁ができてから色を決めたからでしょう。ご不満は、炉壇の中の電熱器用コンセントでした。 「お点前すれば銅板が熱くなって、電熱器についているスイッチの操作が電熱器の使用中にできないから、それをどうにか考えてもらいたい」というものでした。自分は涵養庵ではその不自由を感じませんから、そのことを考えませんでした。大工に畳下と水屋の収納の床に点検口をあけて、そこから配線をしてもらいました。

それから、炉蓋は畳でしたが、木製の炉蓋も用意してほしいという事も言われましたので、既製品ではなく、大工に作成させました。

水屋、茶室の工事は終わりました。 自分の感想は手前勝手かもしれませんが「よくできた」というところでしょうか。

今回の茶室工事の一番の目的は、{施主様の老後の楽しみとしての、安くても本格的な茶室を作ろう!}でした。 ですから、材料に関しては、極力在庫の材料を使うことを心がけました。 磨き丸太を面取り柱に加工したり、造作材に、秋田杉の赤身とかではなく、一般的に使っている材料にしました。柱にはどうしても節が見えてきます。それも味とみてくれればありがたいです。しかし、すべて無垢材です。

下地材に石膏ボードとかベニヤ板などを使うのは、今の材料事情から避けることはできません。ここでも、下地や収納内の棚板に使っています。 棚板に無垢の板を使うという事も出来ますが、ここはしょうがないところだと思います。

使用材料の中で作りものにしないようにこだわったのは畳(藁床)、茶室の天井(網代)、躙り口の建具(杉雨戸)などでしょうか。  しかし、やはり茶室は茶室でした。全体として大工の手間はかかってしまいました。  狭い空間に大工の技を注入するわけですから、どうしても手間がかかってしまいました。 大工も材料がどうとかではなく、うちの職人たちは本能的に、出来得る限り、偽物ではなく本物の茶室を作ろうとしました。 ここが、建売住宅やマンション建築を専門とする大工職人と決定的に違うところなのかもしれません。 要するに、施主様の思いや目的、使い勝手などを職人自身は考えるという事をせずに、図面で決められた通りのことを、ただその通りに施工するのを第一に考える人たちとの差だと思います。

おかげさまで、倉庫を茶室に改修する工事の建物に関して見積もり範囲については一段落です。これから、続けて、外構、造園工事になります。 沓脱石や段石は据え付け済みです。これらは、実際には据付け位置を変更しました。

沓脱石は早い段階で据え付けたのですが、躙り口が出来上がった段階で実際に躙って入って、建物と石との離れを見て頂き、離れの寸法を広くしました。

それ以外を、施主様と岡田建設が現在持っている材料や草木を生かして進めます。 とりあえず、富士山の噴石と、昭和の初期に焼かれた瓦が数十枚ありましたから、それを最大限使うことにします。涵養庵から、ハランとヤブラン、ツワブキ、斑入りの葉の竹などを持ちこみます。まだまだ気温が高く時期的にはよくはないので、水やりをお願いすることになります。そんな事情ですから、いったん現場は終わりました。

外構、造園のプランをまとめて、それが決まれば、また現場通いが始まります。植栽をする頃には、気候も良くなると思います。

次の稿で、この茶室工事を施工させていただき、完成に至るまでの感想、反省などを書くことにします。

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