感動を呼ぶということvol4イメージ

感動を呼ぶ という事_vol4

この夏は、感動で始まって感動で終わるみたいです。
終わるというのは変ですよね。結論が出なければ終わらないですから。
「8月も終わります」が正しいのかなと思います。
それでは 「この夏は、感動で始まって、感動を考えて8月も終わってしまいます。」 です。

今まで建築してきた家々を思い起こしています。そして、前回の話で、主に別荘の話をしてしまいました。 別荘を設計するとき、その土地は広い場所で、建築基準法の高さ制限を考える必要がないので、設計するときに自由にできる部分が多いです。そのため、設計作業をする自分自身の感じる面白さが大きいからだろうと思います。 敷地面積が980坪で建築面積が20坪というのもありました。建蔽率2%。ここは、環境庁から建物の色と植物(樹木)の保全についてものすごくうるさく言われましたが、それをクリアするのも面白かったです。施主様からは「あの木があると磐梯山が見えない、切ってくれ!」と言われました。こちらは「環境庁から言われています。切るわけにはいきません。」しかしその木は翌年、どういうわけか枯れてしまいました。磐梯山が良く見えるようになっています。

別荘で一番考えることは、極力、留守中のメンテナンスをしなくても良いようにする事です。たまにしか行かないという事で、野生動物の侵入にも気を付けて納まりを考えました。このような情報は、地元の人とよく話をして、よく聞かないと出てきません。
東京や近辺の住宅地でキツツキを考えることは全くありません。山の別荘は考えねばなりません。木部を見せると、そこをキツツキに穴をあけられます。忌避剤を塗ることもありました。これも地元の人からの注意事項でした。 大工、仕上げ関係職人、電工は東京から連れていき泊まり込みをさせました。水道などの設備関係は地元の業者さんを頼みました。特に、給排水関係は、地元でなければだめです。寒冷地では給水管にも水勾配を施さなければなりません。 給水管の一か所を下げておき、帰る時に給水管の中の水をそこで抜いて、給水菅内の水が凍って破裂するのを防ぐためです。

東京近辺の話に戻します。
練馬区の現場―敷地面積約15坪細長い敷地、角地で建蔽率は70%(60+10)。容積150%。単純に延べ坪は27坪以下になります。西と北側に4m道路。施主様の希望は、居間6畳と食堂6畳(DKで可)は別にする。子供(男女)部屋が2、夫婦の寝室6畳、来客用の部屋6畳。合計6部屋。当然、トイレ(2か所)・浴室・脱衣室・物干しベランダもありという事でした。この建物では、家相を考える余裕はありませんでしたね。

元建売住宅の狭小敷地に多くの部屋。設計は困難を極めました。随分と考えました。
二分の一をGL下に埋め込む(道路斜線を2階でなるべく受けないようにするために本来の1階を埋め込んで地下階としました)そのうえ、地下室で延べ面積不算入、小屋裏部屋を設けて不算入。地下階の壁芯よりも撥ね出す2階以上の寸法は1m未満。 竣工したときの施主さん(中学高校の同期生です)の反応は、「岡田なら出来て当然」みたいな感じでした。「大変な事なんだぞ!」と言いたかったですね。 数年たって、奥さんが交通事故に遭い、加害者(建築関係の人だったらしい)が謝罪の挨拶に来たという事でした。その時「すごい家ですね。感動ものです。」と言い、「どなたの設計ですか?」ときかれたそうです。その時になって初めて気が付いたみたいで、「よくやってくれたんだね。」とほめられました。事故の加害者のおべっかかもしれないとは思いつつ、自分のお鼻がぴくぴくしてました。

やはり、練馬区の現場です。―Y邸、100%家相重視の住宅でした。木造在来工法です。工事のスペックは、外壁・二丁掛けタイル一部吹付、内部・腰壁突き板貼、クロス貼、枠は無垢材大工造作、真壁の和室。φ450㎜の大黒柱を使用、そんなところです。
設計し、平面図を方聖閣(※)の先生にチェックしてもらいます。立面図を書き、チェックです。OKが出て、工事着工の運びとなりました。同じ時期、3軒ほど先で、あるプレハブメーカーが工事を始めました。
毎日、いろいろな職種の職人が現場作業です。日曜日、祝日以外、現場に職人が入らない日はありませんでした。そういう風に工事日程を組み、その通りに職人を動かすのが自分の基本方針です。 その時期のプレハブメーカーの現場は週休4~5日でした。うちには毎日職人の車が4台ほど、現場敷地内に駐車しました。正直、車幅の三分の一ほどは道路に出ていましたけれども。他の職人たちは、1回の作業時間が短かかったので路駐でした。
工事が佳境に入り、Y邸現場に来る職人の車が増えてきました。 そのようなときから、急にそのプレハブメーカーの工事車両が増えました。 「まずいな。」と思いました。案の定、近隣から警察に連絡が入り、駐車違反の取り締まりがきつくなりました。
Y邸工事とプレハブ住宅の工事がほぼ同じ時期に終わりました。外構工事、植栽工事も終わりめでたしめでたしです。ここでは、車庫の床に枕木を使いました。床をコンクリートとかにしたくなかったからです。 プレハブの家はコンクリート金鏝仕上げでした。仕上がりの違いがはっきりとわかるのです。床からの太陽熱の反射もなく、車がいない時でも、無味乾燥にならないと非常に喜んでもらえました。
それから、この家でも自分のこだわりを入れたのですが、階段の幅を3尺ではやりませんでした。ちょっと広いかなと思いながらも4尺にしました。引っ越してから、そこの高校生のお子さんたちが、「この家では階段ですれ違えるんだね、すごいね」と感動していました。
もう少しあとになって、ここの奥様と、近くのプレハブ住宅の奥様とお話をするようになった時、そこの奥様が、「あのお宅(Y邸)は毎日職人さんが入るのに、うちは誰も来ない。一日でも入居が遅れるようなことがあったら、絶対にお金は払いません!」といったそうで、それから職人が入るようになったと言っていたそうです。 迷惑な話です。ああいうところは、職人たちに徹夜作業をさせてでも引き渡しを絶対に守らせます。 Y邸が終わってから、そうしてもらえれば警察に怒られなかったのに。 最も自分が手配をすれば、あの工法と仕上げならば工期は三分の一で竣工させることができたでしょうね。外壁はサイディング、中はビニールクロス。規制枠を使用。
工事の坪単価はこちらの方がちょっと高い程度だったそうでした。

つぎは板橋の常盤台の現場―木造の2世帯住宅です。ここは、一度お断りをした物件です。そして、お父様は工事が始まる直前にお亡くなりになりました。
お施主様の会社が岡田の隣にありお付き合いがありました。毎日、常盤台のご自宅の周りの道路を清掃し会社に来てから、会社の周りの道路を清掃します。福祉協議会の活動も積極的にしておられます。考え方も行動も、ものすごく立派な方で、自分自身大変に刺激を受けました。
生前、お父様がある設計士と打ち合わせをしていて建築確認まで取っていたのです。 その図面を持ってきて、これでいくらかかるか見積もってくれ、と言われました。その図面を検討すると、全くひどいとしか言えない図面でして、すぐにこれでは良い建物はできないと分かりました。 お父様が亡くなったことでもあり、工事を延期してでも再検討しなければだめだと思い、お断りに行きました。 お施主様はなぜこの図面で工事ができないのか理解できませんでした。「僕は、あなた様と今後も良いお付き合いをさせていただきたいと思っています。この図面の通りに家を工事するとなると、その良い関係を続けることは出来なくなると断言できます。なぜならば、使い勝手も悪く、雨漏りも防ぎようがない納まりになっています。それを工事で直すことは出来ません。出来上がってから恨まれてしまいます。ですからお断りさせていただきます。」とお伝えしました。その時、近くでうちの現場がありそこにお連れしてみてもらい、「このようにはなりません」と申し上げました。
何週間か経って、そのお施主様が会社にお見えになり、「前の設計士はお断りしました。岡田さんが良いと思うように設計し直してぜひ工事までやってほしい」と言う事でした。もちろん喜んでお受けさせてもらいました。 前の設計士とはちょっとしたトラブルが発生しましたが、それもこちらのアドヴァイスで解決をさせました。
設計をさせていただき、工事をさせていただきました。植栽工事まですべて完成したときには、心から喜んでいただきました。「自分が思っていた遥か上の家です。自分たちがこのように素晴らしい家に住んでも良いのか!」とまで感動・感激してもらいました。そこまで喜んでいただきこちらとしても心からの感謝です。 その方とは今でもお付き合いさせていただいております。 月に一回あるいは二か月に一回は会社でコーヒーを飲みながら、「孫が生まれました」とか、「あちらが痛い、こちらが痛い」などと話しています。一生のお付き合いができるものと確信しています。

もう少し書こうかなと思いましたがこの辺にします。 推敲するために読み返したらば、自慢話になっているきらいがあります。 自慢話は自分が死ぬ直前、明日か明後日かのときまで止めます。過去のことです。未来志向で行きます。
そうなると、建物で感動する、感動させるということをもっと考えねばならないということですよね。
竣工してから感動する要素というのは、その時代によって変わっていくものだとは思います。しかしながら、契約した工程を守ってスマートに管理するあるいはそれができるというのは、その会社が積み上げた経験なりの発露であり、財産だと考えます。
ここの部分は触る必要はないということで、もっぱら、今後、どのように感動をしてもらうかを考えてみることにします。

-岡田の仕事
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