奇跡の一本松

2011.3.11 あれから10年経ちます

使い古された表現です。 「あれから、もう10年経ちました。」「あれから、まだ10年です。」 決してひとくくりは出来ませんが、部外者からはたぶん「まだ」でしょうし、夢中で生き抜いてきた実際の被害を受けた方々にとっては「もう」なのだろうと思います。 自分らにとって、ルーツが陸前にあります。父親が陸前高田市の出身であり、母親と妻が大船渡市出身です。「もう」と「まだ」どちらなのだろうと考えたとき、「もう」に近いのではないのだろうか? と考えています。
南三陸町防災対策庁舎
今の時期、あの時の津波の映像がテレビなどで頻繁に流されるようになります。被災者が流されるショッキングなものだからか、これから津波の映像が流れますという事前の案内の後です。
こんな自分でも見るのはすごく嫌です。見せられると、まだ涙が出てきます。 そして、今現在の復興されたと言われている、{埋め立て地}の様子が流されます。 行政は「かさ上げ」とか「土盛り」とか言っていますが、自分は{埋め立て}だと考えています。 故郷の、緑いっぱいの山の土を削りだし、三陸自動車道のトンネル工事で出た産廃残土の処分場、{埋め立て地}の様子が「かさ上げされて出来た地面の上で、復興された新しい生活が始まっています。」と言われている様子を見る時、どうなのだろう、こんなんじゃないんじゃないかと言う気持ちがぬぐえません。
近くの山の上から、津波で流されたときに撮られた写真と、その時に撮った場所と同じところから写された写真がテレビで流されたとき、 なぜか「違う!」と言う気持ちがふつふつとわいてきました。 ここに新しい生活拠点を作った人たちは、流される前、流されて仮設の時、そして今と建物にお金をかけています。今後大丈夫なのかを考えてしまいます。
他の三陸沿岸の被災地と同じように陸前高田市の人口はかなり減っています。埋め立てて復興すべき場所と決められた地域の住民たちは、津波の前に営業していたお店が少しだけ、決死の覚悟で戻ってきています。それでも、まだまだところどころしかお店はありません。

陸前高田市はじめ沿岸の市町村は、あの大災害が発生する以前から人口減少が進んでいます。今後、市の人口が元以上にならなければここはまた営業が成り立たずわずかに戻ってきたお店も無くなってしまうかもしれません。その可能性は、限りなく大きいと思えてしまいます。 これは、ただ以前にあった街並みを再現する事だけしか考えずに、これからの将来人を呼びよせる明確な何かが無いとだめだと思います。

少し山の方に入ったところでは、津波の被害を受けなかった町や集落の建物が、何十年かあるいは100年を超えた歳月を経た建物が並んでいます。 ところどころに、昔は藁葺きだったと思われる家の屋根が赤とか青のトタン屋根の家があるのがなんともいいようのない複雑な気持ちにはなりますが、それらには年輪を刻んでいるという様子、景色に溶け込んでいるという様子を見て取ることができます。そして、建築されてから何年、何十年と経て、その時代(とき)の良さになってくるものと思います。
本来、建物というのはそうあるべきだと思っています。様々な色や形を使ってデザインを競い合っている東京などが違うと思います。これはこれで、地域の特性でしょう。 自分自身、デザインは皆と同じはいやですから、それなりに考えて設計しますから。 しかし、年数がたって、ただ古くなるだけでは嫌だなと言う考えはあります。
今の復興と称される地域の建物の状況は、全国一律の、大手住宅メーカーの均一で無難なデザインで味気ない街並みなような気がしてなりません。
これはこれで、また、その地域の新しい風景になっていくのでしょうか?

一つ疑問があります。 10年前のあの時の津波によって壊された原発が、水素爆発をおこして、建屋が吹き飛びました。 その水素爆発を起こして吹き飛ばされたときの映像は、当時の実況のとき以来、ほとんど流れません。なぜなのでしょう? 津波で人が流される映像は流すのに。
原発事故のものすごさを見せたくないから「変な心配をさせるから、テレビで流すんじゃない!」みたいなことを考えている人がいて、その意向を汲んで流さないのではないかと勘ぐっています。

最後に、あの原子炉建屋の壁の厚さがどのくらいのものか、知っていますか?  自分が、昔、現場をたたいていた時に担当していた現場で、銀行の建物の施工をしていました。その建物の銀行部分のコンクリート壁の厚さは約40cmで、鉄筋は構造計算によって必要とされてと言うよりも、銀行強盗の侵入防止に力点を置いた数は入れられていました。鉄筋と鉄筋の間に手が入らないくらい。原子炉建屋の壁の厚さは約1mだそうです。 原子力発電所で何か間違いがあると、それさえも吹き飛ばす威力があるという事です。絶体にないといっていますけど。・・・
2mか3mくらいだったらば、もちこたえたのでしょうかね~? 今後動かそうとしている原発は、全体をさらに分厚いコンクリート壁の建物で覆って、水素爆発みたいな事故があってもその中で納めるくらいにしておけば、もっと安心できるかな?

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