躙り口部分 茶室根太取付

倉庫の一部に茶室にする工事-Vol.4

設計から施工・竣工まで

この段階でも、見積もりから別途の工事はありました。そのような別途金額が含まれた見積金額について、その内容説明などのお話し合いをさせて頂き、ご納得をしていただいた上でご契約していただきました。 特に造園部分は、見積もりに入れるのは困難でした。お施主様のそこまでのお考えがまとまってもいませんでした。

いよいよ工事の段階に入ります。しかしすぐに現場に入るわけではありません。準備作業があります。 まず、工事予定表を作成します。 この規模ですと、大工との打ち合わせがほとんどになります。他の職方は、かかっても2~3日程度、ほとんどが1日仕事ですので、各職種の工事期間についての打合せをしません。 こちらが建てた工程表に則って、その時に現場に入ってもらう、そういう打合せをします。

そして、工程表作成で考えることは、予備日です。天候などの要因で仕事ができない余計にかかる日数をどうみるか。 そしてこの現場の場合、基礎、構造躯体は既存をそのまま使いますので、問題になるのは、躯体の強度と、矩(カネ)と陸(ロク)です。強度の劣化については腐朽の程度を想像し (経験に基づいての予測)、水平と直角がどれだけ狂っているか、それを取り込むためにはどのくらい余分に手間がかかるかという事です。 この建物はもう50年以上経っています。狂っていて当然です。 工程を作成するときは、くるっていることを前提として余計な時間がかかることを読み込みます。どのくらい余分にかかるかを見込むのは経験です。 それから重要なのは、梅雨に入るので雨の影響を見込まなければならないという事です。どれだけ見込むか?これはカンです。

そして、この段階で、とりあえず発注から納品まで時間のかかる品物を発注します。

いよいよ大工が現場に乗り込みます。まず、現場で改めて、きちんと計測したところ案の定、土台の水平と柱の建て入れ(垂直)が狂っていましたが、思惑の範囲に収まっていました。腐朽程度も現認したところ、過去の白アリ被害が一部見られましたが、添え木程度の補強で大丈夫でした。

外壁は垂直ではありませんでしたから、既存内壁の内側に小間柱を垂直に立てて、直線に壁下地を作りました。その新しい長辺の壁下地に対して、直角に短辺の内壁下地、間仕切り壁の下地を作成しました。 そのような作業をやって水平と垂直そして直角を調整しました。 床の大引き、根太の取り付け作業をします。当然に水平を見ながらです。

アルミサッシの取付も並行作業です。柱が倒れているので、普通は柱に直接取り付けるのですが、垂直を見ながらサッシ取付用の部材を入れての作業になります。また、既存のモルタル壁があるので、サッシを取付るのに壁が当たる箇所はモルタルカットの作業が必要でした。防塵丸鋸にコンクリートカッター用の刃を付けて、切断します。 このような作業で気を付けなくてはならないのは雨仕舞です。雨水が室内に入らないように、納めに注意をしながらサッシを取り付けます。

余談ですが、この建物を建てた当時は、壁に塗ってあるのは純粋なモルタルでしたから非常に硬いのです。切断が大変でした。現在は細骨材に合成の細骨材を入れますから、重量も軽いし、切断も楽です。

このような作業がすんでから、電気配線工事、水道配管工事が入ります。 電気工事が入るまでには、照明、スイッチ、コンセントの位置を施主様と打合せして、決めておかなければなりません。 エアコンと換気扇の位置も決めておきます。 見積り段階で、仮の位置を決めてありますが、立体化してから、その確認をしてもらうという事です。

エアコンは水屋側に取り付けて、茶室側に冷気、暖気を引っ張ることにしました。 茶室に取り付けない理由は、普通の壁付は無粋ですから考えられませんし、壁あるいは天井の埋込み式は、金額が高いですし、水屋と茶室を合わせた面積でも能力が過大な製品しかありません。 もう一つの理由に運転音があります。茶室内が非常に静かですから結構うるさく感じます。それらが水屋側にエアコンを取り付ける理由です。

水道配管工事については、給水工事に関してなんの問題もありませんでした。排水工事も内部に関しては水屋流しだけですから、管径も細く、考えることはあまりないです。ただ、躙り口の為に沓脱石を地面よりも下げたので、そこに流れ込む雨水の排水を考えなければなりません。既存排水管につなぎこまなければならないので、そこのところの勾配が考えどころでした。 一時ポンプアップという手段も頭に浮かびました。結果的には、既存の排水につなぎこむことができたので、ポンプの必要はありませんでした。

内部作業は、床の畳の杉板12mm下地床張り(茶室)、縁甲板下地の12mmベニヤ張り(水屋)など。天井と壁に断熱材を入れて、ラワンベニヤ、プラスターボード張りです。

並行して躙り口廻の土庇の作成作業です。 磨き丸太を柱と桁に使います。垂木は45mm角、見上げの天井は杉板を張りました。 丸太の柱脚部分は、丸太材を直接土に埋め込まないように、L=1mくらいの足場用の丸パイプを柱に組み込んで、パイプ部分を埋め込みました。

金属パイプを土に埋め込んで大丈夫なのと、ご心配をなさる方がいるかもしれませんが、足場用のパイプは、非常にさびにくいです。富津荘で足場パイプを雨の当たる場所で10年以上おいてありますが、あまりさびていません。表面だけです。 台風が過ぎると、塩で樹木の葉が落ちるくらい潮風が当たる場所なのに、その程度です。

かなり話がそれますが、群馬県の伊香保温泉に行く坂の途中に、建築途中で工事が止まってしまった 柱と梁の鉄骨むき出しの建物が放置されています。鉄骨部分は浮き錆がひどくなっていますが、残っている足場パイプで浮き錆は見られませんでした。

空気にさらされてその程度です。地中に埋め込むというのは、空気に触れなくなるので錆を心配しません。

このような作業が進みました。 打合せを進める中で、沓脱石など造園関係のお話が出るようになりました。 イメージがだいぶ出来上がってきたようです。 そのような時期に、造園業者の資材置き場に沓脱石を見に行く事にしました。いろいろな石が山と積まれていました。その中から、鞍馬石という種類の沓脱石を選びました。そこまで降りる段の為に御影石を2枚、また、母屋から降りる時のためにもう一つ沓脱石を選びました。 鞍馬石は、本物が少なくなっている石です。古くからの造園屋さんだから残しておいたのだと思います。 後日、それらを実際に据え付けました。庭に富士山の噴石がありましたので、それも利用しました。

土庇の屋根葺きは、雨の合間を見ながらの作業です。 昔のざれ歌で、「職人殺すにゃ刃物はいらない。4日も雨が続けばいい。」なんてのがありましたが、外部作業の多い、屋根屋さんとか、防水屋さんにとっては梅雨の季節は大変です。 外壁のモルタル塗りも雨ではできません。

内部作業は窓枠の取付作業を進めています。躙り口の納まりが厄介です。 壁厚があるので枠の幅が広くなってしまいます。それはどうしようもない事なのですが、考えどころです。床柱もとりついて、窓枠も取りついてきて、どことなく格好が出てきたように思います。 しかし、一般の人にとっては、壁がふさがっていないとまだまだとかしか見えないのでしょうね。

この間に、お施主様と仕上げ関係の打合せを並行して進めます。畳の敷方とか炉蓋畳をどうするか?とか、見積もりでは、炭用と電気ヒーター用の2個の銅炉壇を見積もっていましたが、実際の取り替える時に重すぎるのではないかと考えたものですから、炭用を基本的には据え付けたままで、電気ヒーターの炉壇のみを入れ込む方式を考えました。電熱ヒーターのコンセントの位置についても話し合いました。

茶室の天井板は網代天井が良いという事で、矢羽根と市松と組み合わせることにしました。このあたりのお話は次に続く・・・。

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