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超高級な和室のリフォームを提案していますVol.1

岡田建設の下職さんからのご紹介で、文京区内の超の付く高級マンションの1室で、高級和室の工事をやってほしいという依頼を受けました。
聞けば、現在都内で、タワーマンションが多く建設され、住宅として分譲されていますが、買い手の「1部屋を純和室にしてほしい」という希望がかなえられないという事が多いのだそうです。マンションの1室を和風の部屋にすると言うのはどこでもやっているのではないの、何ができないのだろうと思っていました。

考えてみると確かに、木造住宅と称していても住宅メーカーの和室と言うのは、床に、ただ、畳(と言ってもスタイロフォームに畳表を張ったもの)を置いて、壁には柱に見せかけた薄板(厚さ20㎜、見付100㎜くらい)を貼り付けているのが多く、天井は木目模様のビニールクロスです。自分が考えている本当の真壁の和室などと言うのはほとんど無いのではないというのが実情でしょうか。 現実的に、木造でも真壁の和室を施工した経験のない大工ばかりだと思います。 まして、コンクリート造の建物の1住戸の中の1室を純和室にすると言うのは非常に難しいし面倒くさいかもしれません。
確か、20年以上前の話ですが、住宅メーカーでご自宅を建てた方が、2年くらいして、「柱が倒れてきたんだよ。」と話していました。自分が考えるに、柱が倒れるという事は家が倒れると同義だと思っていました。その方がほかの部屋にいて、バタンと音がしたので和室をのぞいたら、柱?が倒れていたという事でした。
そのような話を聞いた後で、たまたま、その方の家にお伺いして、その部屋を見ることができたのですが、大壁の和室でした。柱に見せている薄板が壁から剥がれただけでしたね 。ぶつかってけがをしなくてよかったと思ったものでした。

要するに、今回の依頼者の方は、岡田建設がどれほどのものを提案してくるのか、提案できるのか見てみようじゃないか、という事です。よそでできないことをやるという事でもあるので、今回の依頼は俄然やる気に火が付きました。
なにせ、涵養庵は4面をコンクリート壁の中での、純粋な小間の茶室です。これよりはずっと簡単です。 これでもか! あなたは、ほんとにこちらが提案したものをその通りやれますか? みたいにしてみようと思った次第です。
今自分が考えられる最高の和室にしてみようと思って、その提案の最初からの過程を書いてみることにしました。

丸太イメージ

施主様には、「外国の方がよくお見えになるので、日本建築のすばらしさを見せたい。」と言うのが根底にあります。 予算の提示はしてくれませんでしたが、「良いものを使って欲しい」ということでした。それから、床の間の柱は、北山の絞り丸太という事だけを仰っていました。
20数年前に岡田建設で施工させてもらった、建築工事費が坪当たりにすると200万円になった住宅以上になるかもしれないと思っています。この住宅は決して贅沢な数寄屋造りの家ではありません。和風の、延べ坪が75坪で造園・外構工事は抜いて、1億5千万円の工事費がかかりました。 この住宅に準拠したものを提案させてもらおうと考えました。

まず、どのようなプランにしようかと言うところから始めます。
今回は、どんな材料を使おうかな?というのも考えながらリフォームプランを考えます。

床の仕様から。いただいた住宅の図面には8畳間とありますが、少し変形していて、中途半端な大きさの畳を敷かないようにしようとすると、畳は6畳しか敷込めません。これを3尺角の縁なし本畳(わかりやすく言うと琉球畳)にしようと思います。畳が敷かれない部分には板畳が入りますが、ここに、檜か欅の無垢一枚板を使おうと思います。 欅板の方が良いかなとも思っています。
別に書いたと思いますが、欅の杢目にはその模様によっていろいろと名前が付けられています。 玉杢の欅板にしたいと思います。 ほかの材料で金額の張るものとして、黒柿の板が考えられます。黒柿の値段は、黒色が多いほど高く、目が飛び出るほどになるものもあります。 自分としては、感覚的に黒柿の板よりも欅の板の方が良いと考えました。 紫檀とか黒檀、鉄刀木というのもありかと思いますが、輸入品は極力使わないようにしたいと考えます。

壁について、施主様から「腰壁を」と言われています。その材料として考えられるものは、普通は木の板です。檜とか、欅とか、その材種を何にするかを考えるわけですが、偏屈な人間は木の板は考えたくありませんでした。 なにか? まず考えたのは石です。それも庵治石。斑のきれいなもの。畳からの高さは50㎝くらいか。厚みは25mm程度。
次に考えたのがタイル。細長いもの。12mm×200㎜くらいのタイルをH=500程度まで張ります。腰壁として、その次に和紙を考えます。どうしようもなくなって何がいいかな?と言うときに考えるのが木という事になります。 そして、偏屈な人間は、木でもただ一枚板ではないものを考えます。 例えば箱根寄せ木細工を使うとか。しかし、模様が細かすぎて映えないかもしれません。

腰壁から上の部分は、本絹を張りたいです。これを袋貼りします。当然、張り合わせ部分の布がほつれないようにします。
袋張りで、また30年ほど昔の話を思い出しました。クロス貼以外を請け負った現場でした。住宅用エレベーターを取付けたり、ABC商会のシステムキッチン(当時で900万円くらいの品物)を据付たり、電動でカーテンを開閉したり、ベランダ手すりなどにはミカミの錺金物を使ったりと、そして完成後、壁には40号程度の大きさの有名画家の美人絵が掛けられていたという、かなりな住宅でした。
先に言いましたが、クロス張りは別途で、お施主様のお知り合いの内装屋さんが施工しました。
工事中のある日、現場は内装工事に入っていて、クロス貼り職人が、見てすぐにわかるほどの最高級の布を張っていました。普通にパテをして、なぜか刷毛で糊を全面に塗って布を貼っていました。
確かに、布でもいろいろあります。川島織物の布クロスは、壁下地にパテをして、機械で糊付けして貼ることはできます。しかし、その時の品物は川島織物の品ではなく、他の経師屋ルートのメーカー品でした。「それ、袋貼りじゃないとまずいんじゃないですか」と言いましたが、その職人に軽く無視されたことを思い出しました。 案の定、1年半くらいで、パテが浮き出てきてしまいました。 そこのお施主さんには申し訳なかったですが、告げ口みたいになるのは嫌ですから、原因とかを聞かれても分からないとしかいいませんでした。直接その内装屋さんに聞いてもらった方が良いですから。
この話は、ただ値段の高い物を使っても、きちんとした扱い方を知らないと、何の価値もなくなるという事を言いたかったのです。
戻します。壁の仕上げ材として次に考えるのは、一般的に左官仕事になります。 漆喰壁、京壁、聚楽壁、珪藻土壁などでしょうか。
自分にとって、全面に木は無いと思います。洋間であれば木もありますし、変わったところでは皮を貼るという選択もあります。 無難に納めると、腰は板、そして塗壁でしょうね。

天井は、何にしようかな~? 本当に楽しいです。♪♪♪。
オーソドックスなのは、敷目天井。 3尺幅を使いたいのですが、これを使うには最低12畳くらいの二部屋以上の続き部屋が欲しいです。ここの広さではバランスが良くないと思います。2尺幅で、樹種は屋久杉でしょうか。神代杉も良いです。
もう少し考えようかな。 網代天井にしたらどうかな?

畳の真上部分は網代天井、板畳の上部分は? 布張でしょうか。
もう一案。3尺角の網代天井板と3尺角の杉板を市松に張るというものを考えました。畳が琉球畳で3尺角ですので、それに合わせてみます。
ちょっと考えて、2尺角にした方が良いかな? 3尺角では大きくて、天井が低く見える恐れがあります。
1.5尺角ではうるさいと思います。 あと何があるかな~?

次に床の間の仕上げを考えます。 地袋ありがお客様のご希望です。床柱は北山の絞り丸太がご希望。
これは、ぜひ、天然の出絞丸太です。あまりごつごつしたものではなく、品の良い出の丸太を選びたいです。そのようなものを探してもらうので、すぐには見つからないかもしれません。
もう1本床柱を立てたいです。 鳥居になりますが、品よくまとめれば、良しとしたいです。その1本に、黒柿でしょうか。あるいは秋田杉の糸柾にしようかな?

落し掛けは、床柱に合わせようと思います。黒柿なら黒柿、杉ならば杉です。虎斑の竹とか布袋竹でもよいかなと思います。大工さんがかわいそうかな。 落し掛けを使わないで、幕板で納めるというのもあります。それだと屋久杉の無垢板が欲しいです。この場合の下がり壁部分の下端おさまりは、塗回しとハッカケというのがあります。塗回しだと部屋の壁と床の間の壁が同じでないと無理が出ます。
地袋の天板は、蝋色の漆塗りです。 敷居、立枠も同じものです。艶がたまらなく良いです。工事のタイミングと養生に大変に気を使わなければなりません。 欅板もありですが、板畳で欅板を使おうとしているので、同じ欅材にはしたくありません。
床の間の壁はどうしましょう? まず考えたのは、本金箔紙貼です。 本金ではなく、洋金でも良いと思います。しかし、並べて比べると本金には品と渋さがあります。何というか、金色が赤っぽく。一つだけ見たのでは全くと言ってよいほどわからないと思います。豊臣秀吉の黄金の茶室。究極の素材美でしょうね。 そういえば、プラチナの茶室もありましたね。テレビでしか見たことはないですが。

天井は、壁が金箔なら同じ金箔にします。塗壁ならば、網代とか、杉板になるのでしょう。部屋の天井に網代を使ったときは、杉板でしょうか。
それから、柱や造作材は木曽檜を考えました。秋田杉がきれいだと思いましたが、座敷で茶室ではないので、面皮柱も選びませんでした。木曽檜の糸柾、柾目の詰んだものを選びます。

建具を検討していませんでした。障子の材料も木曽檜にします。桟は面取り、猫間障子です。単なる荒組ではなく、組子や彫刻を入れたいと思います。ここにお金をかけようとすれば、4本建て組子障子で2000万円、3000万円と言うのもありますがここでの提案は止めます。掃き出しサッシの内側にも障子を入れます。寝る時に暗くするために襖を入れたいのですが、引き込みで収める余裕がないので思案中です。
廊下からの出入り口は玉杢の欅板戸です。戸襖と言うのが一般的だと思いますが、自分としては、縁の納まりが面白くないです。地袋の襖は黒漆の細縁で、壁が金箔ならば同じ金箔紙で仕上げます。床の間の壁を左官が仕上げるのであれば、本鳥の子紙で仕上げます。

以上の候補の中から組み合わせをしていきます。

-岡田の仕事, 雑記帳
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