茶室イメージ

倉庫の一部に茶室にする工事-Vol.3

設計から施工まで

見積りに入ります。 茶室の場合、住宅よりも材料の金額を出すのが難しいです。 使用する材料による差が非常に大きいのです。例えば、床柱にしても、金額を言えば一本数万円から数百万というのまでピンキリです。造作材や化粧柱しても、本物か貼物かで違ってきますし、材種による違いも大きいです。また茶室では柱を面取り柱にする場合が多いのですが、太さ、無垢か貼ったものか、産地は、などによってすごく違います。

しかも杉材は秋田杉が良いな、などと言いだすと金額は時価となります。こういうのは、行ったことはないけれど、銀座の鮨屋で(大トロ)マグロを頼む感覚なのでしょうか。マグロといっても、ピンからキリまであるわけですし、ただ単に杉材にするというのは似たような感覚ではないでしょうか。大きな違いは、杉材は事前にいくらかかるかを提示してどうするかを決めますが、マグロの大トロを頼む前に、金額は聞きませんよね。金額を聞いてから注文するというのではなくて、すべて食べ終わっていくらかが分かるという事です。ちょっと怖いです。杉は見て触っての感性です。食べられません。マグロは見ただけでは画餅です。食べて初めて価値がある。

どのような雰囲気の茶室にしたいのか、どこを見せ場にするのか、そしていくらくらいかけられるのか、このような事を打合せをしながら考えます。他のすべてについても同じです。 どのような雰囲気にしたいかというのをこちらが感じ取れるかどうかというのが肝心なところで、非常に難しいのですが、自分にとっては面白いところでもあります。そして、こちらの一番の腕の見せ所は、言われた金額の範囲で、どうやれば偽物にしないでやることができるかだと思っています。

普通の住宅では、坪単価によって施工会社の仕様というのが決まっていることがほとんどだと思います。真壁の和室を作るなどというのは出来ない会社が多いのが実情で柱は隠れます。施主様は材種がどうこうというのは、考えなくても良いのです。 住宅メーカーでは、より細かに金額差によるグレードがあり、それによって使われる基本的な材料は決まっています。 ですから、施主様が考える事は、極端な言い方をすれば、色だけという事にもなるのです。そこだけを考えれば良いのである意味、楽だと思いますが、自分が考えるのは [施主様ご自身の家を建築する] という楽しみが無くなるという事で、すごく残念な気がします。 自分は建築が楽しくてしょうがありませんから、その楽しみを味わえないことがほんとにもったいない気がしてならないのです。

今回、この工事について施主様が考えておられるのは、小間の茶室でご自分でお茶を楽しみたいというものです。小間で自分自身が楽しみたいというのが一番の動機です。お友達を呼ぶにしても気の置けない人だけをお呼びする。そしてお茶というものを楽しみたいというのが最大の目的です。施主様は、長い間茶道を習ってこられています。いろいろな茶室も見ておられます。妥協できる点もご存じです。絶対に妥協できない部分もはっきりしています。こういう方というのは、話が早くやりやすいです。仕上げ材について説明し、提案すると、大体通りました。それが前回の仕上げ表でした。

使用する柱については、幸いにして磨き丸太の在庫が20本ほど、錆丸太の在庫が数本、化粧垂木に仕えそうな角材も在庫していましたのでそれらを使うことにしました。外部化粧柱と桁にこの磨き丸太を使用します。内部の面取り柱にも磨き丸太を加工して使いました。錆丸太は床柱に使いました。 この工事は、基本、改装ですから構造柱は既存のままです。化粧柱は、何か所も使うわけではありませんでした。それでもこちらは金額を出すのにどうしようか悩むのです。大工による加工と、部屋の造作における手間の掛け方によっての差が大きいからです。 磨き丸太を面皮にする手間もかかります。しかしこれはある意味自分のこだわり、本物という部分でもあり、あえてそうしました。 また、外部の土庇についても、庇を支える桁に丸太を使い、桁受けの柱も丸太にしました。丸太と丸太を組むというのも手間がかかります。外部につきましては、デザインをある程度任されていました。

外壁に使うサイディング材も在庫品を使うという事でご了解いただきました。この辺りは、こちらで任されたので使えました。

こういうふうに書くと「随分と在庫品を使えるのだから、だいぶ安くできるね、」と期待されてしまうかもしれません。なかなかそうは問屋が下ろさなかったです。 部屋内の造作部材、仕上げ材、その下地材、建具、サッシ、備品類などは新規ですし、畳は本物でなければいけません。 在庫品の使える範囲は狭いものでした。

総額は、数百万円程度になりました。 これには、2階部分の解体撤去や屋根をかける工事、倉庫内の造作も入っていますので、純粋に茶室工事のみではありません。 しかし、抑えられた金額であったと思っています。

細かな金額について、興味がある方はお問い合わせいただきたいと思います。

茶室のご相談についてはこちらから

倉庫の一部に茶室にする工事
vol.1vol.2 / vol.3 / vol.4 / vol.5 / vol.6 /vol.7 / vol8 / vol.9

-岡田の仕事
-, , ,